名古屋高等裁判所 昭和30年(う)436号 判決
論旨は原判示別表第一の事実につき判示普通貨物自動車一台は唯乗り廻して遊んだだけで領得の意思がなかつた旨主張するを以て案ずるに、窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い之を利用し又は処分する意思をいい、永久的にその物の経済的利益を保持する意思あることを要しない。今本件について之を見るに原判決挙示の証拠によれば被告人は原審相被告人岩村正一と共に多治見市白山町二丁目山又鉱業株式会社車庫内に入り被告人は判示貨物自動車の助手台に乗り、岩村正一が運転し、犬山市、津市、久居町等を経て大阪府岸和田市迄赴いたものであることが認められるから、単に一時使用の為之を自己の所持に移したものでなく、永久的でないにせよ右貨物自動車の権利者を排除し該自動車に対する完全な支配を取得する意思即ち不正領得の意思があつたものといわざるを得ない、のみならず原審公判廷においても被告人は本件窃盗の事実を認めているのであるから、原判決に事実誤認なく、論旨は理由がない。
(裁判長判事 高城運七 判事 柳沢節夫 判事 赤間鎮雄)